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りかさん
15人飾りのおひなさまがありました。

ひな人形、そのものも、もちろん。

よくできた不思議な調度類の美しさや、
本物のような弓矢や楽器
並べる時や、しまう時の、大仕事やナフタリンのにおい
ひとつひとつ、置く場所や意味が決まっていること。

おひなさまにまとわる、あの、華やかな空気。

それから、いつも、ひいばあがだしてくれていたこと。

記憶のひもをとくと、きちんと想いのある、
いいおひなさまだったんだなぁと、おもいます。

小さな家に住んでいた時は出せなかったり、
ひいばあがいなくて出せなかったり、
そんなことに興味のない時期もあったり・・・

でも、いつだったかな、
中学生?高校生?くらいのとき、突然また
おひなさまのことを思って、無理やりひとりでだしたことがあります。

おひなさまをだして、みんなの寝室からはなれた
おひなさまの部屋で、ひとりで一緒に眠りました。

あのとき、どうして急にそうしたくなったのか・・・

この物語を読んだとき、そのことが、ストンと胸に落ちました。

ー 人形のほんとうの使命は生きている人間の、強すぎる気持ちを
  とんとん整理してあげることにある。

それに、わたしそのとき、夜中に
白いもやもやとしたもの、みたんですよ。

あれは、おひなさまの想いの、スクリーンだったのかな。




おばあちゃんの勘違いから、ようこのもとにやってきた、
リカちゃん人形ならぬ、市松人形の「りかさん」。

はじめは、がっかりしていたようこですが、
おばあちゃんに言われたようにお世話をしているうちに
りかさんとこころが通う日がやってきます。

りかさんを通して、人形たちの声に耳をかたむけ、
さらにその奥の、持ち主だった人たちの想いー
喜びや慈しみ、悲しみ、時には憎しみや苦しみに触れ、
ようこのこころは、すこうしずつ、おおきく、深くなっていきます。

   ・      ・      ・

人形を愛でる、ようこのおばあちゃん、麻子さんの言葉が、
ひとつひとつよく、静かな迫力で胸にせまります。

受け入れること、許すこと。

つながりを感じるこころの目をもつこと。

感じるための、余裕。

全て、少しずつ意味は違うけれど
みんなつながって持っていなくては、発揮されないこと。


相手を抱擁し、きれいな色をださせる
よい媒染液のような少女に、なってほしいと願うお母さんたちは、
この本を、そっと本棚にいれておくといいと思います。

麻子さんのようには、なかなか、なれなくても・・

麻子さんの想いを伝えることや、
よき導き手がいれば、ようこのように成長することは、
きっと、だれにでも、できると思います。



「りかさん」

梨木香歩 作 偕成社 1260円