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ハリネズミのプルプル
忘れっぽいというのは
欠点だとばかり思っていたのですが、
最近は、いい面もみえてきました。

それは、一度観た映画や、読んだ本や、話の結末を忘れて
何度でも新鮮にこころを動かすことができること。

安野光雅さんの「旅の絵本」のような探す絵本は、
一生、見つけ続けることができます。

リスのように、大切なものをしまった場所を
すぐに忘れてしまい、ずっとたって、思いがけないところから
でてきたときの喜びは、たとえようもありません。

ただ、こういうことは
自分だけでたのしんでいられるからいいのですが、
人と対するときは、忘れっぽいのは、やっぱり
どうしても欠点になってしまいます。

相手も、同じくらい忘れっぽければ、話は別ですが・・


  

ハリネズミの仲間というのは、
ものごとを覚えておくには頭が小さすぎて、
あんまりたくさんのことを、長く覚えていられないそうです。

なので、この物語の主人公のハリネズミのプルプルも、
プルプルのともだちのフルフルも、家族も、先生も、みんな
とても忘れっぽいのです。

どのくらい忘れっぽいかというと・・

フルフルの誕生日に、親戚中があつまって
パーティーをひらいたけれど、本人は忘れて遊びにいってしまい、
でも、集まった親戚も、フルフルのお母さんも、
だれもなんで集まったか覚えていなかったので、みんなでたのしく
なぜか「フルフル」と大きく書かれたケーキを食べて過ごしたり。

森でおこなわれる、サクランボつみ大会の練習のために約束をして、
かろうじてフルフルが手に書いておいたので集まれたものの、
うっかり手を洗ってしまって、すっかりなんで待ち合わせをしたか
思い出せなくなってしまったけれど、森じゅうのハリネズミが
サクランボつみ大会のことを忘れてしまっていたので、何も起きなかったり。

プルプルのお父さんが、ひさしぶりに旅から帰ってきた・・
といっても、お父さんは旅にでたわけではなく、散歩中に帰り道のことを
忘れてしまって、そのままほかのところへいっていたのが、
たまたまその「旅」の途中で、家の近くを通りかかっただけだったり。

    ・     ・     ・

並くらいの忘れっぽさの人では
あたまがこんがらがってしまいそうですが、
完全な忘れん坊の共同体の、彼らの生活はいたってシンプルです。

たとえ、ふと、何かを疑問に思ったとしても、
それが解決する前に、たいていは疑問に思ったこと自体忘れてしまうので
とても平和です。

振り返れないので、前向きで、「今」にひるみません。

でも、どんどん忘れて、今だけがすべてでいるかというと、
そうでもなく、経験や愛のようなものは、蓄積されているのですよね。

そうでなければ、「今」にも、意味がなくなってしまうし・・

あたまは、小さすぎて、たくさんのことがはいらないのなら、
そんな経験や愛のようなものは、きっとこころや体にとけているのかな・・

なんて。

「みんなで忘れればこわくない!」の、のどかでおだやかな
ハリネズミたちの、たのしい、たのしい、おはなしです。

考えやすい質のかたは、眠れなくなることに、ご注意くださいね。



はりねずみのプルプル 1 森のサクランボつみ大会
           2 イチジクの木の下で
           3 キンモクセイをさがしに


二宮由紀子 作 あべ弘士 絵 文溪堂 各1575円