読みもの <
おさるのまいにち
童話のかたちをしているけれど、
ひらいてみると、文字はとても少なくて、大きくて、絵ばっかり。

読んであげれば、ちいさな子もたのしめるし
小学生ならすぐに読めてしまう、この、おさるシリーズですが、
おとなが読んでも、しみじみと、いいのです。

ふふふ・・
と笑いながら、でも、本を閉じたときに
こころのなかに、ちょうどいい場所ができているのに、
気がつくとおもいます。

何に、ちょうどいいかというと・・




ちいさな南のしまにすむ、おさるのまいにちは、
あさ、おひさまがのぼるとめをさまし、
まず、おしっこをして、
ごはんをたべます。
それからけづくろいをして、
きのぼりをしたり、
かえるなげをしたり、
みずあびをしたりして、
よるになったらねむります。

つぎのひも、やっぱりおひさまがのぼるとめをさまし、
おしっこをしたり、ごはんをたべたり・・

つぎのつぎのひも、おひさまがのぼると・・

毎日、毎日、
おなじリズムのなかで、流れる時間。

世界中を旅するうみがめのおじいさんが、
島にたちよって、旅のおはなしをしてくれるのが、
1年にいちどか2どの、ビックイベント。

わくわく、わくわく・・

そして、また、おじいさんは旅に、
おさるたちは、いつもの毎日にもどっていくのです。

・ ・ ・

本の中で時間は、ただ、ゆっくり、ゆっくり、流れます。

だれもいそがないから、時間がいっぱいあります。

毎日、毎日、おなじリズムのくらし。
だからこそ、持つことができる、大切な時間。
宝物。気づくこと。

深呼吸をして、新鮮な空気で胸を満たしたときのように、
本のなかで、さるたちに寄り添った分だけ、
本を閉じたわたしの中にもできた、からっぽの場所。

ちょうどいい大きさの余裕が、はいるくらいの、あたらしい場所。

大切にすれば、きっと、
さるたちが見たような、おおきなおおきな船も
見えるかもしれないと思います。




”おさるのまいにち”
いとうひろし 作 講談社