これほどやさしい気持ちでいっぱいの物語は、どこにもないと思います。
わたしの体の、空気にふれている部分全部から、
やさしさがしみ込んでくるような、あたたかい奇跡の物語です。

サマーは、お母さんを亡くし親戚の家を幾つか回った後で
遠い親戚であるメイおばちゃんとオブおじちゃんの家に引き取られてから、
二人の深い愛情と思いやりの中、本当に幸せだけを感じて、過ごしていました。
ところが、突然、悲しい出来事が起こります。
愛情がいっぱいつまった大きな樽みたいだった
メイおばちゃんが亡くなったのです。
悲しみで身動きがとれなくなってしまったオブおじちゃんと、
そんなおじちゃんを見て不安で押しつぶされそうになりながらも
必死でしがみつくサマー。
そんなある日、おじちゃんがメイの霊が現れたと言い出して・・・
「愛されていた」という確信をもったサマーの口から語られる物語は、
おじちゃんにあいた穴を自分が埋められない無力感におそわれているとき
最後の希望が絶たれたと思ったときでさえ、
わたしにはしっかり根を張った安心に包まれているように感じられます。
そしてやがて、ささやかな愛情が積み重なって小さな奇跡を起こしたとき、
サマーは受けとめ、理解し、自分自身と向き合い、
こんどはまわりの人を幸せにする女の子に成長していきます。
現実と、自分とまわりの人の気持ちを受けとめること。
信じること。
かたちのないメッセージに耳を澄ますこと。
そんなささいなことができれば、
メイおばちゃんのような優しい奇跡は、
いつでもおこるのかもしれません・・
「メイおばちゃんの庭」
シンシア・ライラント 作 斉藤倫子 訳 中村悦子 画 あかね書房