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ケルトの白馬
大きな感動、渦みたいな感動を味わいたい!と思うとき、
わたしの家の本棚にあるサトクリフのなかで
いちばん短い(小犬のピピンをのぞいて)、この本をとりだします。

数年おきに、何度か読んで、その度にさいご
ぼろぼろ、ぼろぼろと涙をながします。

でも、本棚にもどして、しばらくたつと、
こんなに短い物語に、わたしは
また、次も同じくらいこころを揺さぶられるだろうか・・
もしかしたら、今のわたしは、涙を流さないかもしれない・・
と、どこか心配になるのです。

でも、それは、かならず杞憂におわり、
読み終えて一晩か二晩たったころ
この読書体験の大きな満足感と信頼とともに、また、本棚にもどします。

つぎに、ひらくときまで。




イギリス、バークシャーの丘陵地帯に今も残る
地肌の白い土を削って描いた巨大な白馬。(表紙の写真です。)

一体、いつ、誰が、なんのために、
この軽やかに丘を空を翔るこの白馬を描いたのか・・
サトクリフの答えが、この物語です。

誇り高き戦士の民、ケルトの部族の族長の息子でありながら
先住民の血が混ざり、褐色の肌をしたルブリンは、
次第に、 音を、声を、風を、捉えて描く
ものつくりの人としての才能を目覚めさせます。

どこか変わった空気をまとうルブリンが、
厳しい運命のなかで、
一族の誇りを、血を、友情を、自らの誇りを、才能を、全うする様を描いた物語。


一晩で読めるほど、短いのですが、不思議な力を内包します。

目に映るひとつの姿から、壮大な物語を紡ぎだすサトクリフの力と、
人々の想像力を刺激する、古代に描かれた白馬の力とが、
合わさった物語なのですから。


最後のことば。

「自由になれ、わが弟」

ということばの、重み。

自由が尊ばれ、
いくつもの自由が人生に用意されている今の時代には、
あまりない、「運命」の重み。




ケルトの白馬”
ローズマリー・サトクリフ 作 灰島かり 訳 ほるぷ出版