読みもの <
風をつむぐ少年
父親の仕事の関係で転勤の多いブレントは、
あたらしい学校で「うまくやる」ことが、すべて。

迷路を手探りで歩くような、
まわりの目次第の不安定な価値観しかもたない彼
(彼の両親・・・とくに父親、もそうなのですが。)は、
もちろん、満たされることなく、
常に、焦り、不安、迷い・・が心を占めています。

そして、ある夜。
友だちの家でのパーティーで大失態をおかしたブレントは
酔ったいきおいで自殺を図り、その結果
見ず知らずの18歳の女の子、リーを死なせてしまいます。

リーの両親が、ブレントに求めた償いは、
「アメリカ大陸の四隅に、リーの顔をした風の人形をたてること。」

それでも世間体を気にする両親や
抱えきれない罪の意識から逃れるように
彼は、はじめて手にする大工道具をバックパックにつめ、旅にでます・・・





物語は、旅にでる理由となった大きな出来ごとのほかは
ちいさなきっかけをつむいで語られます。

立っていた場所を失ったブレントは、
旅の途中で出会う人びとから、
自分の目で見たものから、感じたことから、
きっかけをひろっていきます。

そして、そのきっかけは、ブレントのなかを通って
だれかのところへ。
さらに、彼の作った風の人形にのって
時間を超えて、思いもしないだれかのところへも、運ばれていき、
そこからまた、物語が生まれます。

きっかけ。
ひとつのことがらが、直接なにかを起こすのではなく
なにかを起こす、きっかけに。


いつでも、だれでも・・
たとえ、リーの命を奪ってしまったブレントにでも、
もっているものを水におとして、波紋を次に伝えることができる。
そう気がついたブレントは、もう、
罪も過去もしっかりと踏み固めた、地面のうえで、未来を向いています。


ちいさなきっかけの、波紋。
だれかのおこした、ちいさな風・・

どこまでも、どこまでも、つながっていく。

目に見えないけど、見える気がする。
感じられる。
とてもさわやかな気持ち。


気持のいい風を、つむごう。




”風をつむぐ少年”

ポール・フライシュマン 作 片山しのぶ 訳
あすなろ書房