日本の絵本 <
ルリユールおじさん
わたしは、本が好きです。

でも、どこがどう好きなのか、うまく言い表せません。

なので、かわりに、本の素敵なところをまっすぐに表現してくれている
言葉や文章をみかけると、大切に、ぽけっとにしまいます。いつでもとりだせるように。

「ムギと王さま」の、まえがきに書かれる、
ファージョンが少女時代に本の小部屋で過ごした、濃密で甘美な時間。

シンガーの心の中をそのまま語っているようだという、
「お話の名手ナフタリと愛馬スウスの物語」での移動本屋の言葉や、
幼い頃からのナフタリの物語へ対する想い。

リンドグレーンの「ブリット・マリはただいま幸せ」の中で
本がだい好きで快活な少女ブリット・マリが、明るく本を讃えるいくつかの場面ー

わたしはただ本を読むのが好きというだけでなく、自分の手もとに本があって
いつでも読める、という感じも好きなのです。父さんと母さんは、すべての子
どもに読んでほしい本が何冊かある、と考えています。どこの親も同じように
思っていてくれているといいのですが。そのおかげで、わたしたちはずいぶん
楽しい思いをしてきたからです。


というような。




大切にしていた図鑑のページがこわれてしまった少女。

なおしてくれる場所を探して、パリの街を走り回る少女は、
ルリユールという、本なおしの職人の話を聞き、路地裏へやってきます。

扉の向こうは、たくさんの紙や皮やその他、大小の道具や材料でごちゃごちゃ。
目を輝かせる少女の声と、本から聞こえる声に耳を澄ませながら、
本なおしのルリユールおじさんは、しずかに、丁寧に
あたらしい命を吹き込んでいきます。


ルリユールという言葉のもつ、「もう一度つなげる」という意味の通り
少女の想いとルリユールを
木の図鑑とルリユールおじさんの思い出を
この出来ごとすべてと少女の未来を、つなげて、綴り、
丁寧に仕上げられたストーリーは、とても丈夫でしっかりとしていて、
わたしの絵本への信頼をしっかりと受けとめてくれます。

そして、ルリユールとよばれる職人たちが
生涯をかけてよみがえらせているのは、ただのものとしての本ではなく
知識や物語や人生や歴史や人々の想いだということが、
とても自然に感じられること・・

この絵本は、その存在自体が
わたしのぽけっとをいっぱいにふくらましてくれます。


やっぱり、本屋さんになって、よかったなぁ。



”ルリユールおじさん”
いせひでこ 作 理論社