日本の絵本 <
ぼんさいじいさま
桜が、一番の盛りをすぎると、
お店までの自転車コースを、ちょっと変更します。

うちとお店の、ちょうどまん中くらいにある、大きな大きな桜の木。
風のあるおだやかな日に、その下を通るのが、この季節のたのしみのひとつです。
その桜の下を通ると、頭からつま先まで、さーって新しくなる感じがするのです。

去年、はじめてこの絵本を読んだとき、
その気持ちと似ているな・・と、思ったのでした。





春の空が青く晴れわたったある朝。

いつものように裏山の弁天さまにあいさつをし、
いっしょに生活を送る動物たちも、いつもと同じのどかな一日の始まり。
いつものように宝物のたくさんの盆栽に水をやり、
満開になったしだれ桜の盆栽を、大満足で眺めている盆栽じいさまのもとに、
小さな小さなひいらぎ少年がひょっこりあらわれます。

「ばんさいじいさま、お迎えにきましたよ。」


ほんのちょっとの間、じいさまに名残があったのか、どうか。
大好きなたばこをゆっくり一服して、
自慢のしだれ桜をちょっとさわって、
背筋をすっとのばして、
じいさまはひいらぎ少年といっしょに歩き出します。


死を描いているのに、しっかりと生きていることを感じる絵本です。

共に暮らしていた動物たちも、家を囲む木や草も、
そしてじいさま本人も、しっかりと生きてる。

それだからこそ、
言葉では知っていても、なかなか実感できない
一日一日の生の先に死がある・・ということの一端を
感じることができるのでしょう。

裏木戸をくぐり桜の舞う風の向こうに歩いていくふたりの後ろ姿は
次の行くべき場所へまっすぐに向かっているようで、
わたしは、うれしくなりさえします。

自然に受け入れられて、自然にとけこむこと。
生の終わりを描いた絵本です。



”ぼんさいじいさま”
木葉井 悦子 作 ビリケン出版