外国の絵本 <
私が学校に行かなかったあの年
最初にこの本を目にしたときは、まだ洋書で
新刊ができるといつもそうしてくれていたように

セーラー出版の小川さんが、一枚一枚ページをめくりながら説明してくれたのですが、
そのときから、好きになる予感でいっぱいで、翻訳されるのが楽しみでした。

ジゼル・ポターの独特な絵は以前から気になってはいたものの
「これだっ!」とまで思える本には出会っていなかったのも、ひとつの理由で
これは、ポターがはじめて文章も書いた絵本で
しかも、自身の子どものころのことを描いたものなのです。


それからしばらくたって、すっかり忘れていた頃
新刊の箱からでてきて・・

「私が学校へ行かなかったあの年」
考えてみれば、洋書のままのストレートな翻訳ですが、私は、ドキドキしました。

わたしにも、「学校へ行かなかったあの年」があって
それは、わたしの中で、とてもとても大切で重要なことだったから。


わたしの場合、それは、大学を辞めてフランスへ行っていた1年間で
自分で選んでそうしたことなので、ポターのそれとは少し意味もちがうのですが、
でも、いままで自分を乗せて流れていた時間から飛び降りた
あのぽっかりしたひとときということでは、同じな気がするのです。





ポターが3歳のとき、両親は”ミスティック・紙のもうじゅう座”という
人形劇団をはじめました。
家族だけで気楽に・・という、家族劇団です。
一家は、そろって、数々の巡業をしました。
これは、ポターが7歳のとき、まる1年イタリアを回ったときの思い出です。

くだものをつつんであるきれいな紙のこと、
巡業用のトラックに描いた絵、
警察に両親が怒られているときに、平気なふりをしたこと、
ダッシュボードに並べたくつ、
ハンドバックをひろったこと、
知らないおばさんにほめられたこと、
家に帰る前の晩、トラックの中のベッドで思ったこと・・

思い出のかけらは、どれも細部まで鮮やかです。

そして、この思いでの先、その後のこと、今のことも
冒頭に著者ノートとして書かれているのですが
それが、いっそうこのひとときを輝かせます。


あたりまえかもしれないけれど
今と昔は、つながっているから。


     ・・   ・・   ・・

ポターにとって、この日々が原点なのでしょうか。
みんな一緒に朝から晩まで過ごした、風変わりな毎日。
絵本が、胸を張っているみたいに、スクッとしていますもん。



「私が学校に行かなかったあの年」
ジゼル・ポター 作 小川悦子 訳 セーラー出版