外国の絵本 <
ローザからキスをいっぱい
作者は、この本の長い前書きの中で、
子ども時代を振り返り、最後にこう言っています。

大好きな人がいて、その人がいなくなれば、まるでからだのどこかに穴があいてしまったようにかんじます。たとえその人が、いつかかえってきてくれるとわかっていても、やっぱりつらいものです。これは、そんなみなさんのためのお話です。




主人公は、お母さんの病気のために、
たったひとりで遠くのおばさんのうちに預けられることになったローザ。

おばさんや、ローザより少し大きないとこのビルギットや、
近所のシュミットさんご夫妻や郵便配達のオットーさんの、
風変わりでも自然体のあたたかさの中で、少しずつ元気を取り戻し、
今に前向きになっていく様子が丁寧に語られます。

題名の由来は、ローザが毎週書くお母さんへの手紙の最後にいれる、
いろいろなキス。

「これはちょうちょのキス。
 おかあさんがまばたきしたら、わたしのところにもどってきます」

とか、

「これはとりのキス。さえずりながらキスができるの

とか、
封筒に、「きをつけて。さかなのキスでしめっています」って書いたりね。

お母さんは、このローザのキスで病気がよくなったと、
手紙に書いてくれます。


ローザを元気にさせたまわりの人の気負わないあたたかさや、
お母さんを回復させるローザのけなげな想いは、
目にみえないし、言葉でも掬えないけれど、
いちばん小さな星のように物語全体にちりばめられて、
たぶん、それが、「癒す」というもののように思います。

受けることも、与えることも、だれにでもできるけれど、
曇ったこころでは、気がつくこともできないもの。


見返しには、昔の写真。
自伝的なお話の、こういうところに、とことん弱いわたしです。



「ローザからキスをいっぱい」
ペトラ・マザーズ 作 遠藤育枝 訳 BL出版