外国の絵本 <
みどりの船
映画のラストシーンは、わざとうわの空。
テレビの最終回は、見ないように。
最後の1本の花火は、火をつけずに家にもって帰る。
とか・・

たのしいことは、まだ終わっていないふりをして
次、また、ひょんなことで続きが始まる・・ということにして
過ごしていくやりかたが、好きです。


歴史をこよなく愛す、高校の歴史の先生は、よく、
年表に点で打たれた大きな出来ごとの間の
ふつうの年月のことを、たのしそうに話しました。

夏が終わっていって、秋が始まって、
でも、今年の夏も、来年の夏も、10年後の夏も、
ずーーーっと続いているんだな・・

なんて、とりとめのないことを思う、
いつもの8月31日です。





ぼくたちはわすれない。
あの夏、みどりの船で航海したことをー・・

  
夏休み、いなかで過ごすことに退屈した姉弟は、
ついに、禁止されていたとなりのお屋敷の庭に、もぐりこみました。
ジャングルのような木々をかきわけ、奥へ奥へと進んでいき、
ふたりが目にしたのは、みどりの船。

えんとつもあるし、マストもある、
デッキには小さな小屋もついている、
植え木を刈り込んで作った、大きな大きな船でした。

船長夫人(このお屋敷の女主人のおばあさん)と水夫長(庭師)と姉弟は、
それから夏中、この船で遊びます。

イタリアの遺跡、エジプト、
天気が悪くて寒い日は、北極、
暑い暑い日は、赤道越えの儀式を。

嵐も無事に乗り越え、
夏が終わる頃には、船から伸びる長いツタをつなぎ止め、港へ到着。

そして、次の夏も、その次の夏も。

やがて、姉弟は、無邪気に遊ぶ時をすぎ、
手入れをする人のいなくなった船は、少しずつ自然の姿に戻っていき・・



みどりの船は、きっと、
思い出ではなく、血となって肉となって、
いつか記憶が薄れる日がきても、なくならない。

終わってゆく、続いている、物語です。



”みどりの船”
クェンティン・ブレイク 作 千葉茂樹 訳 あかね書房 1680円